消費税インボイス制度における2割特例:メリット、適用条件、手続き方法等

こんにちは。福岡県久留米市の公認会計士・税理士 豊岡春樹です。

久留米の冬は冷えますね。
今年から久留米に帰ってきたのですが、福岡市内よりキンキンに冷えているのでベッドから出るのが億劫です・・。

さて本題です。

2023年10月からのインボイス制度導入に伴い、新たにインボイス発行事業者となる免税事業者の皆様の負担軽減のため「2割特例」という制度が設けられています。

この2割特例は意外と落とし穴があるので、本記事では、2割特例について、メリット、適用条件から手続き、注意点まで分かりやすく解説します。

マインドマップ

当記事の内容をマインドマップにてまとめました。

適宜ご参照いただけますと幸いです。

2割特例とは?

2割特例とは、インボイス制度の導入をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)となった方が、納付する消費税額を一定期間軽減できる特例制度です。

2割特例のメリット

  • 消費税負担の軽減: 売上にかかる消費税の全額ではなく、2割のみを納付すれば良いので、事業者の負担を軽減できます。
    ※例えば、売上げに係る消費税額が50万円の場合、2割特例を適用すると納付税額は10万円となり、大幅な負担軽減が期待できます。
  • インボイス制度へのスムーズな移行: 免税事業者にとって、インボイス制度への移行は大きな負担となります。2割特例を利用することで、段階的に制度に慣れていくことができます。

誰が2割特例を利用できる? 適用対象者の要件

以下の全ての条件を満たす必要があります。

  • インボイス発行事業者であること: 適格請求書発行事業者の登録を受けている必要があります。
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること: 基準期間とは、基本的に2年前(法人は2事業年度前)を指します。
  • 特定期間における課税売上高及び給与の額が1,000万以下であること:特定期間とは、基本的に前年の上半期のことを指します。
  • 特定の事業者に該当しないこと: 資本金1,000万円以上の新設法人などは対象外です。

国税庁のウェブサイトに掲載されているフローチャートが分かりやすいのでぜひご参照ください。
インボイス発行事業者の「2割特例」適用可否フローチャート

適用ができない課税期間に対するQ&Aも公表されておりますので、適宜ご参照ください。
インボイスQ&A問115(2割特例の適用ができない課税期間①)
インボイスQ&A問116(2割特例の適用ができない課税期間②)

2割特例はいつまで適用できる? 適用可能な年分

令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間に適用可能です。

・個人:令和8年分まで

【引用:国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要 】

・法人(3月決算の場合):令和9年3月期まで

【引用:国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要 】

2割特例の申告について

  1. 事前の届け出: 2割特例を適用するにあたって事前の届出等は不要です。
  2. 申告: 【付表6】の提出及び【第一表】の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」の欄に〇を付す必要があります。
    詳細は確定申告の手引きをご覧ください。
    【2割特例用】消費税及び地方消費税の確定申告の手引き(個人事業者・法人共通)

2割特例と簡易課税制度について

2割特例の適用を受けた課税期間の課税期間中に、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したときは、
その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます(28改正法附則51の2⑥)。

これには注意が必要ですね。

「消費税簡易課税制度選択届出書」は原則、適用する課税期間の初日の前日までに提出する必要があります。
ただ、2割特例を適用した翌期の課税期間中に届出を提出することで、その課税期間から簡易課税が適用できるということになります。

【引用:国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要 】

これを知らないで、簡易課税を適用したい期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したとします。

そして、「簡易課税の適用対象期間」に多額の設備投資を行った場合、本則課税の方が有利になるが、すでに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しており本則課税が適用できないといったケースもあるかと思います。

これだとおそらく損害賠償を求められるでしょうね・・・

消費税コワイ・・・

まとめ

2割特例は、消費税負担を軽減するために設けられた制度ですが、適用には要件を満たす必要があります。
また、簡易課税制度との絡みなど意外と注意しておくべき点があるので気を付けましょう。

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豊岡 春樹
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