退職金を受け取ったら確定申告は必要? 条件別に解説

こんにちは。福岡県久留米市の公認会計士・税理士 豊岡春樹です。

確定申告シーズンということで、確定申告の際にうっかり誤ってしまいそうな内容を記事にしてみました。

退職所得とは?

退職所得とは、退職金などの一時金を指し、原則として他の所得と分離して所得税額が計算されます。

退職所得の税負担は、退職後の生活を考慮し、一定の優遇措置が設けられています。

しかし、場合によっては確定申告が必要となることもあります。

本記事では、退職所得がある場合の確定申告の要否について詳しく解説します。

退職所得がある場合の確定申告の要否

退職金を受け取る際、「退職所得の受給に関する申告書」の提出状況によって確定申告の必要性が異なります。

(1)「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合

「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払者(会社など)に提出している場合、退職所得は源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です(所得税法第121条2項)。

一般的な退職所得の計算方法は次のようになります。

退職所得の計算式 (退職金-退職所得控除額)×1/2

ただし、以下のようなケースでは確定申告を行う必要があります。

確定申告が必要なケース

  • 医療費控除や寄附金控除を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合

→確定申告書を提出する場合は、「退職所得」を含めて提出する必要があります。

<理由>

退職所得の金額は「合計所得金額」に含まれます。

そして、この「合計所得金額」は、配偶者控除や基礎控除、寡婦控除等の所得控除や住宅ローン控除等の所得要件の判定に使用されます。

そのため、退職所得を確定申告に含めて計算すると、「合計所得金額」が大きくなり、所得控除や税額控除の要件を満たさなくなる場合もあるため注意が必要です。

「合計所得金額」が用いられる場面については、下記の記事を参照してください。

【徹底解説】「合計所得金額」「総所得金額」「総所得金額等」の違いと活用シーン

福岡県久留米市の公認会計士・税理士 豊岡春樹です。 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 本年も定期的に記事の更新をしていきた…

(2)「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、退職金の支払者は退職金の20.42%を源泉徴収します。

この場合、確定申告を行うことで、本来の退職所得の計算方法に基づいて税額の精算が可能となります。

税金が還付される可能性があるため、申告を検討しましょう。

退職所得と国民健康保険料

退職所得を含めて確定申告をすると国民健康保険料が高くなるんじゃないかと心配される方もいるかと思います。

ただ、退職所得は、国民健康保険料の算定対象にはなりません

そのため、退職金を受け取ったとしても、国民健康保険料が増加することはありません。

まとめ

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、原則として確定申告は不要。ただし、確定申告書を提出する場合は退職所得を含めて申告が必要。
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、確定申告を行うことで税金が還付される可能性がある。
  • 退職所得は国民健康保険料の算定対象外であるため、保険料には影響しない。

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