漫画家・同人作家等のための「売上計上日」マニュアル~入金日に惑わされない~

こんにちは。

福岡県久留米市の公認会計士・税理士、豊岡春樹です。

今回は、意外と間違えてしまいがちな「売上計上日」について、漫画家・同人作家等を例にして解説いたします。



1. なぜ「いつの売上か」がそんなに大事なのか?

売上計上日は、確定申告の「ゴールテープ」をどこに張るか、それくらい決算数字を左右します。

青色申告の55万円65万円特別控除や赤字の繰越といったメリットを受けるには、複式簿記×発生主義が大前提となります。

帳簿にズレがあれば、税務調査で指摘を受けたりしかねません。

​以下は参考にしてください。

・国税庁タックスアンサーNo.2072 青色申告特別控除

・国税庁タックスアンサーNo.2200 収入金額とその計算

2. 入金日で帳簿をつけていませんか?

  • 「1月末に振り込まれたから1月売上でOK」
  • 「出版社の支払調書を丸写しすれば安心」

どちらも半分ハズレくじです・・。


3. 発生主義ってそもそも何?

  • 発生主義:作品を納品・公開し、「お客様の手に渡った時」に売上を計上
  • 現金主義:お金が入出金された日に計上(選択には要届出・小規模条件あり)

青色申告で65万円控除を狙う場合、現金主義は選べません。

つまり、漫画家・同人作家の多くは発生主義で計上する必要があると思っておいた方が安全です。

※小規模事業者の要件に該当した場合、手続きを行うことで「現金主義」により申告を行うことができます。
ただ、この場合55万円or65万円の青色申告特別控除は使えなくなるので注意しましょう。
国税庁 A1-13 現金主義による所得計算の特例を受けるための手続


4. DLsite・メロンブックス等の具体例

例:

  • 2026年1月 売上明細書やお支払報告書が発行
    ※当該明細等には、2025年12月分の販売に係るものと記載あり。
  • 2026年1月 売上金額が振込(銀行入金)

この場合、売上計上日は2025年12月となります。

入金日の2026年1月に記録すると“現金主義”扱いになり、申告が過少とみなされるリスクがあります。

出版社への納品原稿料・印税でも考え方は同じです。​


5. 「支払調書」をそのまま写すと危険!

確定申告時期になると出版社などから届く支払調書は現金主義ベースで作られています。

記載額をそのまま転記すると、発生主義に基づく本来の売上とズレる結果となる可能性があります。

「調書どおりに書けば安全」というわけではないので要注意です。​


6. 売上計上をミスしないためのチェックリスト

チェックポイント実務ヒント
取引明細をダウンロード又は紙で受け取りましたか毎月、各サイトより明細をダウンロードする等して、書類を整理
発生日で帳簿付けはしましたか毎月、こまめに帳簿付けをしておくと後々が楽に
年末年始のズレには特に注意しましたか12月納品→1月入金は“12月売上”。年をまたぐ取引は特に注視
支払調書の金額に合わせるように修正していませんか支払調書は現金主義ベースで作成しているため、帳簿と売上が合わなくてもOK


7. まとめ ~売上計上日を制す者が、青色 65 万円控除を制す~

売上計上日を正しく押さえているかどうかで、決算数字・納税額・信用力はまったく違う顔を見せます。いま一度、あなたの帳簿をチェックしてみてください。

  1. 入金日ベースで仕訳していないか?
  2. 支払調書をそのまま転記していないか?

ひとつでも思い当たれば、現金主義から発生主義へ舵を切る好機です。

「発生主義」で売上を立てるルールを徹底すれば、青色申告 65 万円控除をフルで守りつつ、税務調査にも動じない強い帳簿が完成します。

とはいえ、ご自身の作品作りに集中して、事務作業に手が回らないのは当たり前です。

そんなときは、経理をまるごと信頼できる税理士に依頼してしまうのも悪くありません。

確定申告時期はとても憂鬱で、仕事に集中できない等の不安がある場合は、税理士に頼るのも一つの手かなと思います!

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豊岡 春樹
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