扶養控除~扶養親族の判定を中心に~

はじめに

こんにちは。福岡県久留米市の公認会計士・税理士 豊岡春樹です。

この記事では、所得税における扶養控除を取り上げており、最初に扶養控除の要件をお伝えし、後半で事例を検討していきます。

扶養控除を受けるには、扶養対象者が「控除対象扶養親族」に該当する必要があります。

「控除対象扶養親族」とは下記の要件を満たすものです。

①扶養親族に該当する

②年齢要件を満たす

詳細は下記で見ていきましょう。

マインドマップ

当記事の内容をマインドマップにてまとめました。

適宜ご参照いただけますと幸いです。

①扶養親族の要件

扶養親族に該当するための4つの要件

扶養親族として認められるためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります:

  1. 親族関係: 配偶者以外の6親等内の血族または3親等内の姻族であること
  2. 生計の一致: 納税者と生計を一にしていること
  3. 所得制限: 年間の合計所得金額が48万円以下であること
    • 合計所得金額で判定するため注意が必要です。
      給与収入の場合、収入から給与所得控除を引いた金額が所得金額となります。
  4. 事業専従者でないこと
    • 納税者の事業に専ら従事している家族は、事業専従者として扱われ、扶養親族になれません。

生計を一にするの意義(所得税基本通達2-47)

「生計を一にする」という要件は、以下のように解釈されています:

  • 必ずしも同居していることは必要としない。
  • 同居していない場合でも、生活費等の送金が行われている場合には扶養親族に該当する可能性がある。
  • 同居している場合には、明らかに独立して生活を営んでいる場合を除いて、生計を一にしていると判断される。

②控除対象扶養親族の要件

年齢要件

扶養控除を受けるためには、扶養親族が控除対象扶養親族である必要があります:

  • 12月31日時点の年齢が16歳以上であること
  • 非居住者の場合は、年齢や状況によって異なる規定が適用されます

事例検討

別居している子供がいて、当該親族が「控除対象扶養親族」に該当するか否か

以下のような状況を想定して検討します:

  • 別居している子供は給与収入があるが、年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入が100万円と仮定)
  • 事業専従者ではない
  • 年間の生活費は給与収入だけでは少し賄いきれない
  • 賄いきれない部分を補うために、月2万円程を別居している子供に送金している
  • 年齢は16歳以上

このケースで「控除対象扶養親族」に該当し、扶養控除を受けることが可能かどうかを検討します。

本件の検討

扶養親族の該当性

  • 親族関係
    • 子供は血族であることが明らかなので、この要件は満たしています。
  • 生計の一致:
    • この事例ではこの判定が最も重要になることから、後ほど詳しく解説します。
  • 所得要件
    • 年間の合計所得金額が48万円以下であるため、この要件は満たしています。
  • 事業専従者ではない
    • この要件は満たしています。

控除対象扶養親族該当性

  • 年齢は16歳以上とされているので、この要件は満たしています。

生計を一にしているといえるかどうか

所得税基本通達2-47では、別居していても「親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合」には生計を一にすると言えるとしています。

ただ、送金する金額については明らかにされていません。

そのため、生計を一にしているかどうかは事実認定の問題となります。

過去の裁決事例を確認したところ、「平成23年4月18日裁決」では、「「生計を一にするもの」とは、必ずしも同居していることを要するものでなく、一般に親族が同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしていることをいうものと解される」と記載がありました。

平20.6.26、裁決事例集No.75 645頁」では、「別居していた親族が「生計を一にしていた」ものとされるためには、その親族が被相続人と日常生活の資を共通にしていたことを要し、その判断は社会通念に照らして個々になされるところ、少なくとも居住費、食費、光熱費その他日常の生活に係る費用の全部又は主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要すると解される」と記載がありました。

このことから月2万円の送金が、子供の生活費の主要な部分を賄えていたかどうかという観点で検討することになります。

事例では給与収入が年間100万円と仮定していることから、月で換算すると8万強となります。
そして、仕送りが毎月2万円であることから月の生活費は合計で10万円となり、仕送りの占める割合は20%ということなります。

この2万円があるかないかで生活できるか否かが変わってくるという状況も想定されることから、一概に扶養親族には該当しないとは言えないものの、
否認されるリスクも少なからずあるかと考えます。

具体的には個々の状況によって変わってくることから、判断に迷った際は税務署に相談されることをお勧めします。

まとめ

事例のポイントは下記が考えられます。

  1. 生計一致の判断
    • 別居の場合で生活費等の送金を行っている場合には生計を一にしていると考えられるが、具体的な金額は明示されていない。
    • その場合、事実認定となることから親族の総収入と支出の状況、送金額の割合などを詳細に検討することが重要です。
  2. 税務署への確認
    • 判断に迷った際には具体的な状況を税務署や税理士に相談し、確認することを推奨します。
    • 税務署や税理士の判断を仰ぐことで、後々のトラブルを避けることができます。

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豊岡 春樹
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