【サラリーマン副業】漫画・同人活動を行っている場合、確定申告は必要?

こんにちは。
福岡県久留米市の公認会計士・税理士、豊岡春樹です。

近年、サラリーマンとして働きながら、副業として漫画や同人活動を行う方が増えています。

本業の収入を安定させつつ、自分の好きな分野で活動を広げ、実績を作っていくのはとても素晴らしいことです。

しかし、副業を行う際に忘れてはいけないのが「確定申告」です。

知らずに放置してしまうと、後からペナルティが発生する可能性も。

今回は、そんな副業における確定申告の注意点、特に「所得がいくらから申告が必要なのか?」「経費はどこまで認められるのか?」「事業所得と雑所得って何が違うの?」といった疑問について、分かりやすく解説します。

マインドマップ

当記事の内容をマインドマップにてまとめました。

適宜ご参照いただけますと幸いです。

副業の収入、確定申告は必要?「20万円の壁」とは

まず気になるのが、「副業でいくら稼いだら確定申告が必要なの?」という点でしょう。

ここでは、会社員(給与所得者)で、勤務先で年末調整が済んでいる方を前提にお話しします。

この場合、副業による「所得」が年間20万円を超える】と、原則として確定申告が必要です。

「所得」とは?売上から経費を引いた金額

ここで重要なのが「所得」という言葉です。

「売上(収入)」そのものではなく、「売上」から「経費」を差し引いた金額が「所得」となります。

所得 = 売上(収入) - 必要経費

例えば、年間の副業売上が30万円でも、経費が15万円かかっていれば、所得は15万円(30万円 - 15万円)となり、このケースでは20万円以下なので確定申告は原則不要となります。

【漫画家・同人作家さんの場合の注意点】

  • 売上: 原稿料や印税、グッズ販売の売上などが該当します。
    出版社から受け取る原稿料などで、あらかじめ源泉徴収税が差し引かれている場合がありますが、売上として計上するのは源泉徴収される「前」の総支給額です。
  • 経費: 活動に必要な支出が経費として認められます。後ほど詳しく解説します。

※住民税の申告について
所得税の確定申告が不要な「所得20万円以下」の場合でも、住民税の申告は別途必要になる場合があります。お住まいの自治体のルールを確認しましょう。
確定申告を行えば、その情報が自治体にも連携されるため、別途住民税の申告を行う必要はありません。

副業の経費、どこまで認められる?(漫画家・同人作家さんのケース)

副業で得た収入から差し引ける「経費」。
これをしっかり計上することで、所得を圧縮することできるため、漏れないように集計することが大事です。
漫画家や同人作家さんの場合、以下のようなものが経費として考えられます。

  • 制作にかかる費用:
    • 画材費(ペン、インク、用紙など)
    • PC、ペンタブレット、プリンターなどの機材購入費(※高額なものは減価償却が必要な場合があります)
    • 作画ソフト、フォントなどのソフトウェア購入費、サブスクリプション代
    • 資料代(書籍、雑誌、取材費など)
    • 印刷費、製本費
  • 活動場所にかかる費用:
    • 自宅で作業している場合の家賃、水道光熱費、インターネット通信費(※事業で使用している割合で按分計算が必要)
    • コワーキングスペースの利用料
  • その他:
    • イベント参加費、出展料
    • 打ち合わせのための交通費、飲食費(一部)
    • 作品販売のためのプラットフォーム手数料
    • 税理士への相談料・依頼料

【経費計上の重要ポイント:家事按分】
自宅兼作業場の場合の家賃や水道光熱費、プライベートでも使用するPCやインターネット回線などは、「プライベートでの使用分」と「副業での使用分」を合理的な基準で分けて(按分して)経費に計上する必要があります。例えば、作業時間や使用面積などで按分します。

経費関連のより詳しい情報については、以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:【漫画家、同人作家さん向け】経費に計上できる代表的なものと注意点を解説!

【ご参考程度】こんな場合も確定申告が必要!国税庁の情報をチェック

副業の所得が20万円以下でも、あるいは副業をしていなくても、確定申告が必要になるケースがあります。国税庁の情報を基に、主なケースを見てみましょう。

【出典】国税庁タックスアンサーNo.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

大部分の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません。
しかし、給与所得者であっても主に次のような方は、確定申告が必要です。

  1. 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  2. 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得(副業の所得など)の金額の合計額が20万円を超える人
  3. 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
    (注)給与の収入金額の合計額から各種所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
  4. その他(同族会社の役員で貸付金の利子などを受け取っている人、災害減免法の適用を受けている人など)

ご自身の状況が上記に当てはまるか分からない場合は、国税庁のウェブサイトで詳細を確認するか、税務署や税理士にご相談ください。

副業の所得は「事業所得」?それとも「雑所得」?税金で損しないための知識

いざ確定申告をしようとなった時、「この副業の所得は、どの所得区分で申告すればいいの?」という疑問が出てきます。
税金の世界は専門用語が多くて、少しややこしいですよね。

一般的に、サラリーマンの副業で得た所得は「雑所得」として申告するケースが多いです。

「え?『事業所得』で申告した方が、青色申告特別控除(最大65万円)とか、いろいろメリットがあると聞いたけど・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、「事業所得」として認められれば、青色申告を選択することで節税効果の高い様々な特典が受けられます。
しかし、安易に「事業所得」として申告してしまうと、後日税務署から「それは雑所得ですよ」と指摘を受け、修正申告や追徴課税が必要になる可能性があります。

「事業所得」と「雑所得」の判断基準

「事業所得」か「雑所得」かの判断は、過去の判例などでも争点となってきました。基本的な判断ポイントは以下の通りです。

  • 営利性・有償性の有無: 利益を得る目的で行っているか。
  • 継続性・反復性の有無: 継続的に、繰り返し行っているか。
  • 自己の計算と危険における企画遂行性の有無: 自身の責任と判断で事業を計画し、行っているか。
  • 費やした精神的・肉体的労力の程度: 相応の時間や労力をかけているか。
  • 人的・物的設備の有無: 事業に必要な設備や人員を整えているか。
  • 職業としての認知度・社会的地位: 一般的に職業として認知されているか。
  • 生活状況: その所得が生活の主たる糧となっているか。

これらに総合的に該当する場合、「事業所得」と認められる可能性が高まります。

しかし、サラリーマンの副業の場合、本業が別にあるため、どうしても副業に費やせる時間や労力は限られてきます。
そのため、副業の所得は「事業所得」としての実態を備えるまでには至らず、「雑所得」と判断されることが多いのが現状です。

税金 ム ズ カ シ イ・・・

近年の改正:帳簿書類の保存状況や収入金額による形式的な判断基準も

さらに、近年では所得税基本通達の改正により、従来の判断基準に加え、帳簿書類の保存状況収入金額といった形式的な側面も「事業所得」と「雑所得」の区分において考慮されるようになりました。

簡単に言うと、適切な会計帳簿を作成・保存していない場合や、作成していても副業による収入金額が「僅少」である場合には、「雑所得」に該当する可能性が高いという考え方が示されています。

まず、会計帳簿についてです。
「事業所得」として申告する場合、原則として、日々の取引を複式簿記などの方法で記録し、それに基づいて貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成・保存する必要があります。これには簿記の知識が求められるため、ご自身で一から行うとなると、学習コストや手間がかかり、ハードルが高いと感じる方も少なくありません。日々の取引を正確に記録し続けるのは、確かに骨の折れる作業です。

次に、収入金額の目安です。
国税庁が公表している資料では、帳簿書類の保存がある場合でも、「その所得の収入金額が、例年(概ね3年程度の期間)300万円以下で、かつ、主たる収入(本業の給与収入など)に対する割合が10%未満であるような場合には、一般的に(特に反証がない限りは)雑所得に該当する」という考え方が示されています。

つまり、しっかりとした会計処理と帳簿保存が行われていないケースや、副業の収入が本業に比べて著しく少ない場合は、原則として雑所得として扱われる可能性が高いということです。

副業の確定申告、どうすればいい?

確定申告が必要な場合は、毎年原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に、前年1月1日から12月31日までの所得について申告と納税を行います。
国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、自宅のパソコンやスマートフォンからe-Taxで電子申告が可能です。

もし、「自分の場合は確定申告が必要なのか?」「経費の判断が難しい」「事業所得か雑所得か迷う」といった場合は、税務署の相談窓口や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ:副業と税金の知識を身につけて、安心して活動を続けよう!

サラリーマンとして働きながら副業を行うことは、収入アップだけでなく、自己実現やスキルアップにも繋がる素晴らしいチャレンジです。しかし、収入を得る以上、税金の知識は避けて通れません。

  • 副業の「所得」が20万円を超えたら確定申告を検討。
  • 売上から経費を引いたものが「所得」。経費の計上を忘れずに。
  • 副業の所得は、多くの場合「雑所得」。安易な「事業所得」での申告は注意。

今回の記事が、皆様の人生の一助となれば幸いです。
正しい知識を身につけ、確定申告も適切に行い、安心して創作活動や副業に取り組んでいきましょう。

もし、ご自身のケースで判断に迷うことや、帳簿付け・確定申告手続きが難しいと感じる場合は、税理士にご相談いただくのが確実です。
早めの準備と対策で、スムーズな申告を目指しましょう。

確定申告が間近になると、一般的に税理士報酬も高くなる傾向にあるので、早めの依頼がお得かも!!

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豊岡 春樹
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