漫画家・同人作家は本当に法人化すべき?“迷っているあなた”に読んでほしい税理士の本音
こんにちは。福岡県久留米市の公認会計士・税理士、豊岡春樹です。
4月ですね。
今年も早くて1/4が終わりました。
あっという間ですね・・
おかげさまで、多くの漫画家・同人作家さんからご相談をいただく機会が増えてまいりました。
今回はよくあるご相談の一つ「法人化(法人成り)をすべきか?」というテーマについて、私個人の見解も交えつつ、できるだけわかりやすく解説したいと思います。
結論:漫画家・同人作家の法人化は、慎重に判断を
結論から申し上げると、漫画家・同人作家の方が法人化するメリットは限られており、個人的にはあまりおすすめしていません。
むしろ、デメリットのほうが目立つケースが多い印象です。
では、なぜそう考えるのか。
まずは一般的な法人化のメリットを確認した上で、漫画家・同人作家のケースに当てはめて考えてみましょう。
一般的な「法人化」のメリットとは?
法人化の代表的なメリットは以下の通りです。
- 社会的信用力が上がる
法人という形態にすることで、取引先からの信頼が向上し、仕事の幅が広がることがあります。 - 資金調達がしやすくなる
金融機関からの融資が受けやすくなり、事業の拡大がしやすくなります。 - 経費にできる範囲が広がる
法人は、役員報酬や退職金なども経費として計上できるため、節税につながる場合があります。

では、漫画家・同人作家にとってはどうか?
1. 社会的信用力が上がる → あまり意味がないことも
多くの漫画家・同人作家さんは、ご自身の才能・実績で仕事を得ています。
法人化したからといって、信用力が劇的に変わることは少なく、売上の増加に直結しないケースがほとんどです。
2. 資金調達がしやすくなる → 恩恵は限定的
設備投資や経費が少ない業態であるため、そもそも資金調達が必要な場面が少ないのが実情です。
例外としては、以下のようなケースです。
- アシスタントを複数名雇用している
- 外注費、先行投資(グッズ制作、物流など)が増えている
このような事業規模の拡大を見込んでいる方にとっては、法人化のメリットが出てくる可能性があります。
3. 経費にできる範囲が広がる → 確かにメリットはあるが注意点も
法人化することで、代表的なものとして役員報酬や退職金を経費として計上できます。
ただし、税務上の要件が厳しく、役員報酬は途中で自由に変更できないなど、思い通りに節税ができない場合もあります。
法人化のデメリットは?漫画家・同人作家の場合
以下のような点が、実際にデメリットとしてのしかかってくる可能性があります。
1. 自由にお金を引き出せない
法人のお金は「会社のもの」です。
個人事業主のように、自分の口座から自由に引き出すことができなくなります。
2. 役員報酬は途中で変更できない
毎月の生活費にあてるためには、役員報酬を設定して支給する必要がありますが、原則として期首に決めた金額を1年間変更できません。
柔軟な収支管理が難しくなる場合があります。
3. 社会保険の負担が重くなる
法人化すると、「文芸美術国保」は使えなくなり、協会けんぽ・厚生年金に加入する必要があります。
例えば月額50万円の役員報酬だと、社会保険料だけで会社負担込み約15万円程度になる場合もあります(簡便的に計算しています)。
※ご参考⇨全国健康保険協会 令和6年度保険料額表
4. 平均課税が使えなくなる
個人の漫画家、同人作家さんは原稿料、著作権料、印税等の収入が大幅に増加した場合等は「平均課税」を適用し、税金を抑えられる制度があります。
法人になるとこの制度は使えません。
5. 事務作業・管理が増える
法人は、税務申告や登記、社会保険など、守らなければならないルールが一気に増えます。
漫画家、同人作家さんは事務作業が苦手という方が多い印象であるため、かなりのストレス要因となるかもしれません。
6. 専門家への報酬が増える傾向に
- 設立:司法書士
- 社会保険関係:社労士
- 税務関係:税理士
このように、必要となる専門家も増えるため、顧問報酬などのコストがかさむ傾向にあります。

では、法人化すべき人はどんな人?
ここまで読むと、「法人化=デメリットばかり」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、たとえば「平均課税が使えないほど収入が安定して高く、税金を抑えたい」というようなケースでは、法人化が適している場合もあります。
ただし、先ほどお伝えしたように、法人化には事務負担の増加といったデメリットも伴います。
そのため、節税効果と事務負担のバランスを慎重に見極めながら、総合的に判断することが大切です。
法人化を検討する際は、一度専門家にご相談してみてください
漫画家・同人作家の皆さまにとって、創作活動に集中できる環境を整えることが一番大切です。
法人化はその環境を整えるための一手かもしれませんが、場合によっては逆に負担が増えてしまうこともあります。
そのため、一度専門家に相談してご判断されるのも一つの手かなと思います。
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
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