同人作家・漫画家さんはいつインボイス登録をすべき?登録タイミングの目安を税理士がやさしく解説

こんにちは!

福岡県久留米市から、全国の同人作家・漫画家さんの創作時間を守る「ペンを置かせない税理士」、豊岡春樹です!

作家さんの原稿の締切を守るために、税務の締切は私が守ります!


この記事では、同人作家・漫画家の方に向けて、消費税の基本的な仕組みからインボイス登録のタイミングの考え方までを、できるだけ分かりやすく整理してお伝えします。

インボイス制度が始まってから、「自分も登録したほうがいいのだろうか」「いつ登録するのが正解なのだろう」と不安に感じている方も多いと思います。

結論を先にお伝えすると、登録のタイミングは「消費税の申告・納付が必要な年かどうか」と「販売先が事業者か一般消費者か」の2つの軸で考えると整理しやすいです。

読み終える頃には、ご自身の状況に合った判断ができるようになっているはずです。

まずは消費税の基本的な構造をおさらいしましょう

インボイスの話の前に、大前提となる消費税のルールを確認します。

1年間(個人事業主の場合は1月から12月)の売上高が1,000万円を超えると、その2年後の年から「課税事業者」、つまり消費税の申告と納付が必要な方になります。

これは強制的に適用されるルールです(参考:国税庁「No.6501 納税義務の免除」)。

ここで勘違いしやすいのが、「売上高が1,000万円を超えたらすぐに申告・納付が必要になるわけではない」という点です。

実際にそう思われている方が結構いらっしゃり、実務でもよくいただくご質問です。

具体例で見てみましょう。

  • 令和8年の売上高が1,000万円を超えた
  • → 2年後の令和10年が、消費税の申告・納付が必要な年になる
  • → 令和10年分の申告・納付期限は、令和11年3月31日
  • → 振替納税(口座引き落としによる納付)を申請している場合は、令和11年4月末頃の納付になる

課税事業者になると、これまでより納税額が多くなります。

ただ、初めての消費税の納付までに約2年間の余裕があります。

その間に納税資金を計画的に準備しやすいのは、この仕組みのありがたい点だと思います。

なお、細かい例外のルールもありますが、まずはこの大枠を押さえておきましょう。

消費税の計算方法は2つあります

消費税の納税額の計算には、大きく分けて「一般課税」と「簡易課税」の2つの方法があります(特例計算もありますが、ここでは省略します)。

  • 一般課税(基本の計算方法):売上でお預かりした消費税から、経費などで支払った消費税を差し引いて計算する方法です。
  • 簡易課税(簡便な計算方法):売上でお預かりした消費税に、業種ごとに決められた「みなし仕入率(経費分とみなす割合)」を掛けて計算する方法です。
    作家さんの場合は基本的に50%の区分となるため、売上でお預かりした消費税のおおよそ半分を納めるイメージです。

簡易課税は、2年前の売上高が5,000万円以下の場合に選択できます。

どちらを選ぶかで納税額が変わるため、課税事業者になるタイミングであわせて検討しておきたいポイントです。

インボイス(適格請求書)とは

インボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれる制度です。

税務署へ登録申請を行うと、登録申請者に「登録番号」が付与されます。

この登録番号を記載した請求書のことを「インボイス(適格請求書)」といいます。

取引先(売上先)が事業者の場合、この登録番号入りの請求書を受け取ることで、支払った消費税を自身の納税額から差し引くことができます(この仕組みを「仕入税額控除」といいます)。

そのため、作家さんがインボイス登録をしておくと、事業者である取引先の消費税計算が有利になるケースがあります。

インボイス登録のタイミングをケース別に整理します

登録のタイミングは状況によって変わるため、順を追って見ていきましょう。

ケース1:消費税の申告・納付が必要な年(課税事業者の期間)

2年前の売上高が1,000万円を超えている場合は、もともと消費税の申告・納付が必要です。

そのため、この期間にインボイス登録をしても、実質的なデメリットは特にありません。

登録する方向性で問題ない、というイメージです。

むしろメリットがあります。

同人作家さんであれば、DLsiteやFANZAで作品の配信をしているケースも多いと思います。

これらのプラットフォームでは、インボイス登録をしているサークルは、消費税分が上乗せされる形で、サークルへの支払額(卸価格)が登録前と比較して増加します。

販売単価(手取り額)が増えるということは、その分だけ売上高が増えるということです。

このケースでは、登録についての論点は特にないと考えてよいでしょう。

ケース2:本来は消費税の申告・納付が不要な年(免税事業者の期間)

少しややこしいのがこちらです。

2年前の売上高が1,000万円以下で、本来は申告・納付が不要な場合でも、インボイス登録をすると、その年から消費税の申告・納付が必要になります。

ややこしく感じる方も多いと思います。

判断の軸は、「自分の販売先がどのタイプか」を確認することです。

① 出版社などの事業者との直接取引が多い場合
インボイスの登録があると取引先の消費税計算が有利になるため、契約がスムーズに進む場合があります。
もっとも出版社側がインボイス番号を特に求めていないケースもあるので、出版社にインボイス番号が必要かどうか直接聞いてみるのが良いかなと思います。

② FANBOXやCi-en、コミケなどの一般消費者への直接販売が中心の場合
一般消費者はそもそも消費税の申告・納付が不要なため、インボイス登録によるメリットは特にありません。

なお、免税事業者の方が登録を受けると、原則として登録から2年間は消費税の申告・納付を継続しないといけないというルールがあります。

この点も含めて、登録の時期は慎重にご判断いただければと思います。

登録タイミングの目安

ここまでの内容をまとめると、目安は次のとおりです。

  • 強制的に消費税の申告・納付が必要となる年:登録してもデメリットは特になし
  • 本来は消費税の申告・納付が必要とならない年:販売先の状況を見て慎重に判断

よくあるご質問(FAQ)

Q. 一般課税と簡易課税はどちらが得ですか?

作家さんのように経費が少なめの場合は、簡易課税のほうが納税額を抑えられるケースが多い印象です。
ただし、大きな買い物や設備投資をした年は、一般課税が有利になることもあります。

また、簡易課税を選ぶと、原則2年間はその方法で計算する必要があります。

顧問契約をいただいている場合は、事前のシミュレーションを実施することが可能です。

Q. 消費税の納税額を事前にざっくりと把握できたりしますか?

はい、可能です。
顧問契約をいただいている場合、半年経過後など、ある程度実績が固まってきた段階で納税額のシミュレーションを実施しています。
このシミュレーションで、納税額のイメージをつかんでいただくことができます。

Q. インボイスの登録申請がうまくできるか不安です。サポートいただけますか?

税理士による代理申請が可能です。
弊所では代理で申請する方針をとっておりますので、ご安心ください。

Q. インボイス登録をすると、本名が公開されてしまいますか?

登録すると、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で、氏名・登録番号・登録年月日が公表されます。
検索は登録番号でしか行えない仕組みですが、請求書などから番号を知った方が氏名を確認できる点には注意が必要です。
※DLsiteやFANZAについては、作家さんと運営会社とのお取引になりますので、一般消費者に作家さんのインボイス番号が公表されることはございません。
また、BOOTH・FANBOX・Fantia・虎の穴・メロンブックス等については、特例(媒介者交付特例)を活用し、作家さんのインボイス番号ではなく、運営会社のインボイス番号を記載して請求書を発行している状況のようです。

Q. 一度登録したあとに、取り消すことはできますか?

取り消しの手続き自体は可能です。
ただし、本来は消費税の申告・納付が不要な年にインボイスを登録すると、原則として登録から2年間は免税事業者に戻れないなど細かいルールがあります。
取り消しを検討される際は、時期をあらかじめ確認してから手続きを進めるのが安心です。

まとめ

最後に、ポイントを振り返ります。

  • 売上高が1,000万円を超えても、強制的に消費税の申告・納付が必要になるのは2年後から。納付まで時間的な余裕がある
  • 課税事業者の期間は、インボイス登録によるデメリットは特になく、DLsite・FANZAでは手取りが増えるメリットがある
  • 本来は免税の期間に登録すると申告・納付が必要になるため、販売先の状況を見て慎重に判断

インボイス制度は仕組みが複雑で、ご自身だけで判断するのは難しいと感じる方も多いと思います。

それでも、売上の規模と販売先という2つの軸で整理すれば、取るべき選択肢は見えてきます。

判断に迷われたときは、無理に一人で決めようとせず、信頼できる専門家に相談しながら進めていただければ幸いです。

この記事が、創作活動を続ける皆さまの小さな安心につながればうれしいです!

同人作家・漫画家のためのインボイス登録タイミングの図解(課税事業者の年は登録OK、免税の年は販売先で判断)

投稿者プロフィール

豊岡 春樹(とよおか はるき)
豊岡 春樹(とよおか はるき)
福岡県久留米市から全国の作家さんを支える「ペンを置かせない税理士」(公認会計士・税理士)です!
作家さんの原稿の締切を守るために、税務の締切は私が守ります。
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